通訳者って、天職ですか?
あなたにとって、通訳者という仕事は『天職』だと思いますか?
〔天から与えられた職務の意〕
1. その人の性質・能力にふさわしい職業。 「教師を-と考える」
2. 神聖な職業。特に,天子が国家を統治する職務。
3. 江戸時代の遊女の階級の一。天神(てんじん)。
(大辞泉 第三版)
起業支援を軸にコーチングを提供していると、「天職」というキーワードが耳に入ることも多くあります。
『通訳って、あなたにとって天職ですか?』と訊かれて、どう答えますか?
ちなみに酒井は、『いまのお仕事(コーチング)は天職ですか?』と訊かれたら、即答で『はい、天職だと思ってます』と答えています。『なぜコーチングを仕事にされたんですか?』と訊かれても、『始めてみると、コーチングって天職だなと思って~~~』なんて話しだしてしまいます。
一方で、この手の話になると出るのが、『天職を見つけたい、天職が見つかったら楽しそう』という「あるある」です。確かに、天職と思える仕事をやっているととても楽しく、成果も出やすいと思います。だから、見つけたい、見つかったらいいなぁ、という気持ちも分かるのですが、、、
『天職という言葉を持ち上げすぎていませんか?』 なんて風にも思います。なにか「天職」に巡りあったら、その瞬間に「これだ!これが私の天職なんだ!」と感じるとか確信するとか、逆に「天職」と言ってしまったら「変えちゃいけない」と思っているとか。
以前に参加した日本会議通訳者協会のセミナーで話されていた、サイマル専属通訳者の倉澤さんは『ずっと通訳をしていてもまだ天職だとは思えていない』とおっしゃっていました。
一方で、酒井は『コーチが天職です』と言い切っています。
『天職だとは思えていない』と『これが天職です』・・・一見、まったく逆のようですが、実は同じだと思っています。つまり、『天職』というものを必要以上に神聖視していない。
倉澤さんがおっしゃっていたことは、『天職だと思えなくても、天職じゃなくても、私のように通訳の仕事はできる、楽しく仕事ができる、求めてくれるクライアントがいる』ということです。本人が『天職だとは思えてない』と言っているお仕事(通訳)でそうなっていますから。
そして、酒井の『コーチが天職です』の根っこには『天職なんてわからない』という思いがあります。いま現在、心の底から『コーチングは天職だ』と思っている一方で、『来年の今ごろはどう思っているかわからない、天職と思えるものが変わっているかもしれない』とも思っているんです。そういう意味で、正確には『いまの時点では』コーチが天職だと思っている、というのが正しい表現かもしれません。
もしかすると、『天職ってそんなものじゃないでしょう』と思う方もいるかもしれません。でも、10年後も20年後も、確実に変わらない情熱で楽しく取り組め続けられるものなんて、そうそうあるものじゃありません。だったら、いまのあなたが天職だと思ったものを『天職です』と言えばいいんです。
それより怖いのは「いまの仕事は天職じゃないんだよなぁ~」なんて、「天職だと思えないから」ということを、いまの仕事を真剣にやらない言い訳にしてしまうこと。ひどい時には「どこかに天職落ちてないかなぁ~」なんて風に聞こえます。落ちてませんよ。
嫌なことツラいことをやり続けるのはしんどいですから、何かを変えるように考えたほうがいいとは思いますが、「そんなに嫌ではない、楽しいこともある」仕事をしているのであれば、それでもいいんです。それでも活躍することはできますし、そのうちに『あ、これ、天職だったわ笑』なんて思える瞬間が来るかもしれません。
なので、あまり『天職探し』に必死にならないでくださいね。目の前のことに真剣に取り組むのも、天職にたどり着く道です。