「この分野しかしません」は強みか弱みか?

ブログ担当の酒井です。

分野を限定するのは通訳者や翻訳者にとって強みになるのでしょうか? それとも弱みになるのでしょうか?

カセツウ養成講座を受講してくれている方からこんな相談をいただきました。

「特定の分野しかしない、したくない、というのはクライアントに伝えてもいいんでしょうか? 不利になったりしませんか?」

この質問、決してこの方が初めてではなくて、いろんな通訳者さん、翻訳者さんからいただくもののひとつです。

通訳や翻訳の分野といってもたくさんありますよね。その分け方自体に業界標準があるわけでもないし、通翻訳エージェントによって定義の仕方もさまざまです。

通翻訳エージェントのホームページを見ると「対応分野」とか「取扱分野」とかいろんな表現でいろんな分野が記載してあります。

医療分野といっても薬学や医療機器も含む場合もあればそれぞれを別で扱っている場合もあるし、金融全般といってもIR、株・証券、銀行、その他無数にあるといってもいいでしょう。

「ビジネス」なんて分野表記もありますが、これだと逆に「ビジネスじゃないものなんてあるのかい!?」なんてツッコミを入れたくなりますよね笑。

そんな無数にある「分野」ですから、すべての分野をカバーするなんてことは不可能です。どれかを選んで専門知識をつけていく、研鑽を積んでいく、というアプローチが必要です。

一方で、幅広い分野を手がける通翻訳エージェントに対して「わたしはこの分野だけです」と言ってしまうと、「その他の分野の仕事」の可能性がなくなってしまうとか、もしかするとコーディネータから「生意気な・・・」なんて思われちゃうんじゃないか、なんて不安も出てくるようです。

この不安に対してのヒントをふたつほど。

  • 「その分野」には需要は十分にあるか?
    分野を絞る際のいちばんの心配は「仕事が少なくなるのでは?」だと思いますが、その分野自体に需要がどれくらいあるのか、を考えてみるといいでしょう。
    絞った分野にあまり通翻訳の需要がないとすれば確かに仕事は少なくなると思います。ですが、例えば「医療専門」と区切った場合、その分野だけで十分な仕事はある、、、と思います。
    この場合の「十分」の定義も重要で、「あなたが稼ぎたいだけの収入をもたらしてくれるかどうか」を基準にすればいいでしょう。
    「医療」よりも「薬学」の方が分野としてより絞られていますし、マーケットとしては小さくなるはずですが、薬学だけであなたが稼ぎたいだけの案件があるようなら十分です。世の中の仕事をすべて獲得しよう、なんて思っていませんよね?笑

 

  • 「生意気だなぁ」なんて思わない・・・と思います
    これは「僕はそうでした」という言い方しかできませんが、別に「この分野だけです」と言われても「生意気だなぁ」なんて思いません。もしそう思われるとしたら、それは「分野を絞って伝えた」ことが理由じゃなくて、「伝え方や表現が生意気と思わせた」の方が正しいでしょうね( ̄▽ ̄;)
    これは今回相談をいただいた方にお伝えしたら「めっちゃ刺さりました」と言われた喩えなんですが、寿司職人が「自分は寿司しか握れませんから寿司を頼んでください」と言うと「生意気な」とは思わずに「おお、、、自信があるんだな、美味しそう」と思いませんか?
    そういうことです。

 

もちろんこの考え方は言語や通翻訳者としてのステージにもよります。スワヒリ語の通訳者が分野を絞るとマーケットが限りなくゼロに近くなってしまうし「十分」な需要もなくなってしまうことが考えられますから絞りにくい面もあるでしょうし、本当に駆け出しの方がいきなり絞り切るのも難しいところもあるでしょう。

絞ればいいってものじゃなく、絞り方にもいろんな工夫や戦略も必要ですが、「絞ると仕事が来なくなる」と漠然とした不安を感じている方のヒントになればと思います。

 

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