当日の延長を断るのは通訳者の身勝手?

ブログ担当の酒井です。

すでに読んだ方も多いかと思いますが、コチラの記事について。

【第5回】翻訳・通訳会社のクレーム処理「身勝手な振る舞い」

 

この記事を読んだ通訳者さんから「どうなんですか?」って質問されたので(^_^)

詳細はリンク先から読んでいただければと思いますが、概要をまとめるとこんな感じ。

  • 通訳を引き受けていた会議が紛糾して予定時間に終わらなかった
  • 会議が続けば当然通訳も必要なので、担当者から「残ってほしい」とリクエストが入る
  • 繁忙期真っただ中、通訳者は次の案件が控えていたので延長には対応できないと断って予定通りの時間に会議の途中で退出した
  • 翌日、通訳エージェントから「延長が出来ない場合は業務を受けるときに言ってほしいです。会議進行中に退席したときも業務後連絡してほしいです」というフィードバックが入る

・・・さて、この通訳者さんの行動は果たして「身勝手な振る舞い」か、どうか。

一部リンク先から抜粋します。

「すみません、ホシノさん、会議が長引きそうでして、少し延長させてもらっても宜しいでしょうか」
「え!」
私は思わず、小さな叫び声を上げてしまった。
「それは承諾しかねます。次の案件があるのです」
「ですが、会議にホシノさんが居ないと大変困ります」
「私は、時間外の業務は致しません。時間になり次第、帰らせて頂きます」
そして、私は会議が進行している中予定の時間になったので会場を出た。その行動に対して、何ら罪悪感は無かった。もちろん、それが“身勝手な振る舞い”だという認識も。

とあるので、きっとこの記事では「身勝手な振る舞いですよ」という捉え方なのかな、と思います。

 

いろんな捉え方があると思いますが、少なくとも僕が通訳コーディネータであれば、この通訳者さんの振る舞いを「身勝手」とは言わない、言えない、思わない、です。もちろん延長を引き受けてくれる方がありがたいし助かるのは事実ですが、契約上はあくまで当初依頼の時間までの拘束力しか発生しないはずで、それ以降は強制できない、というのが僕の認識です。

「延長が出来ない場合は業務を受けるときに言ってほしい」という言葉もありますが、正直、発生するかどうかわからない延長のために毎回の業務で「延長できます」「延長できません」を確認して伝えるのは管理(特に通訳者側の)が煩雑になるでしょうし、ましてや受注した後に次の仕事の予定が入るケースだって普通にあるはずです。

そういう場合にわざわざ通訳エージェントに「引き受けていいですか?」と確認するのもおかしな話です。特にクライアント(通訳エージェント)が異なる場合は。(同一の通訳エージェントならそれはそれで情報共有に課題があるのかも?)で、訊かれた方も「入れないでください!」はムリでしょうから「できれば空けておいてほしいですけど・・・」くらいしか言えませんよね(^^;) だったら訊くだけ無意味というか。それに、そんなことを言いだすと午前中の案件を請けたらその日の午後もすべて空けておかなくちゃいけない、なんて理屈も通っちゃいかねません。

もちろん、あまりにギリギリまで詰め込んでしまってパンクするとか遅刻するとかは完全に通訳者側の経験不足になると思いますが。

 

あ、ちなみに後半の「会議進行中に退席したときも業務後連絡してほしいです」は通訳コーディネータからすると「そうしてほしい」のは事実です。できれば延長が発覚した、そして自分が対応できないとハッキリしている時点で報告が欲しい・・・なんて書きつつ、これだって本当はクライアント側の担当者から通訳エージェントに連絡・相談してくれれば、とも思うんですが(^^;) どうしても通訳者が必要であれば交代する通訳者を急遽手配するとかそういう対応もありえますから。

もうひとつ、リンク先の後半に書いてある「何も言わずパートナーを残し会議終了時間前に退出する場合」については、その通訳者は「身勝手」だし「どっかおかしいんじゃないの?」と思います(-_-;) 「〇時まで」って契約なんだからその時間までいるのは当然です。(もちろん会議が早く終わってクライアントの確認があればOKです)

 

まあこの記事については物語調に書いているというのもあるし、このブログもそうですが笑、多少極端な事例や表現にされている部分もあるとは思いますから、それを割り引いたうえで、ってかんじですが。

 

 

P.S.

あとは、これって通訳コーディネータの裁量というかスキルというか、その辺も関係してくるだろうなと。

「このクライアントの案件は延長する傾向があるんだよなぁ」と把握できていれば、あらかじめ通訳コーディネータの方からクライアントには「延長の可能性はないですか?あるんだったらあらかじめ込みで依頼してほしいし、その時間まで通訳者を確保します。そうでなければ延長発生の際に、もしかすると対応できない場合もあり得ます」くらい言うことはできます。

この件とはちょっと違いますが、僕が通訳コーディネータをやっていた頃のあるクライアントの話。

そのクライアントからの依頼は逐次通訳ということで通訳者さんを手配したところ、現場に行ってみるとウィスパリング通訳を頼まれた・・・なんてケースが発覚(その通訳者さんは現場でその通り対応してくれて、終了時に報告してくれました。冷や汗かきながらとてもありがたかったのを覚えてます)。

なのでその次の依頼時には「逐次ですね?ウィスパリングできない通訳者さんを手配しても大丈夫ですよね?」とクライアントに伝えて請けていました。ここまで言っておけばもし現場でウィスパリングを頼まれて「できません」と返してもクライアントとしては「そうだね、仕方ないね」になります。(実際はウィスパリングだってバリバリできる通訳者さんを手配はしてましたけど笑)

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