良い通訳実績表、悪い通訳実績表

ブログ担当の酒井です。

通訳者に必要なツールのひとつ、『通訳実績表』。

良い通訳実績表と悪い通訳実績表の違いは?

 

通訳実績表はどんな風に書けばいいのか・・・

その前に、『通訳実績表の目的』を考えてみましょう。なぜ、通訳実績表の提出を求められるんでしょうか? 何を目的に提出していますか?

 

あなたの実力を証明するため?

あなたのことを信頼してもらうため?

どんな通訳案件ができるか確認してもらうため?

 

どれも正解とも言えますが、まだ不足とも言えます。

通訳実績表の究極の目的は、『通訳案件を獲得するため』です。つまり、良い通訳実績表というのは、通訳案件がもらえる通訳実績表です。どんなに時間をかけて作成したとしても、どんなに実績を盛り込んだとしても、通訳案件の照会をもらえない通訳実績表は『悪い通訳実績表』ですし、逆に、どんなにシンプルでも、どんなに通訳実績の数が少なくても、通訳案件の照会に繋がる通訳実績表は『良い通訳実績表』です。

こんな風に考えると、ごくごくシンプルに捉えられると思いませんか?

一度、ご自分の通訳実績表を見直して、『通訳案件の照会に繋がりそうだろうか』と、確認してみてください。そういう視点を持って見直すと見えてくるものもあるんじゃないかと思います。

 

なんて書くと、『じゃあ、どんな通訳実績表が通訳案件の照会に繋がるのさ』と思いますよね。それはまたの機会に・・・とすると顰蹙を買いそうなので(笑)、そんなことしません。

ただここで細かいことを書くとキリがないので、原則というか、ベースラインというか、大枠でのふたつだけ。

 

いちばん重要なのは、『読み手を気遣う』こと。

いろんな工夫の点はありますが、何よりも重要なのは、読み手=クライアントのことを気遣うこと、思いやることです。良く挙げる例ですが、通訳コーディネータ時代、20ページにもわたる通訳実績表を送ってきてくれた通訳者さんがいました。おそらく本人としては、『情報は多い方がいいだろう、通訳実績は多い方が信頼してもらえるだろう』というお気持ちがあったんだと思います。そしてそう考えるのは不思議でも何でもありません。皆さんだってそう思うんじゃないでしょうか。

ただ実際は、僕はその20ページにわたる『大作』を受領して・・・ 申し訳ないですが、ほとんど読みませんでした。だから、通訳案件の照会もしなかったと思います。だって、忙しかったから。20ページにわたる実績の中から必要な情報を探し出す時間が惜しかったから。

例えばあなたがハンディカムが欲しいと思って、ヨドバシカメラに行ったとします。そして店員さんに、『ハンディカムを探してるんだけど、どれがいいのかな』と訊いたとします。そしたら店員さんが、『お任せください!』と言って、100ページくらいのマニュアルを渡してきて、『この中に必要な情報はすべて書かれてますから!』と。

・・・この店員さんに『ありがとう!』と言って、100ページに目を通す気になりますか? きっと、他所の店に行きますよね。20ページの通訳実績表は、こんなイメージです。

相手=読み手=クライアントが、迷わずに、パッと、必要な情報にたどり着けるようになっているか、工夫されているか。それが、読み手に対する気遣い、思いやりだと思います。

 

もうひとつ重要なこと。『読んでもらう』

もうひとつは、『読んでもらうこと』です。以下に力を入れて作った、価値が詰まっている通訳実績表だとしても、読まれなくては価値がゼロなのと同じです。特に相手がたくさんの通訳実績表に目を通す立場だとしたら、いかに読んでもらうかから知恵を絞って考えなくてはなりません。

新卒の就職活動に近いかもしれません。それなりの規模になると担当者は数百人の応募書類に目を通さなくてはならないはずですが、その数百人、すべて同じ熱意や時間をかけて目を通すでしょうか? 一文字漏らさず読むでしょうか? きっと、読む前にいろんな基準を設けて弾くはずです。

あて名などすぐ目につくところにに誤字脱字はないか、写真の印象はどうか、字は丁寧かどうか、、、

もしかしたら上に書いたようなことは、本人の仕事の能力や資質とは直接の関係はない、または薄いかもしれません。でも、そこで判断されるのが事実だとすれば、そこをクリアして『読みたい』『読んでみるか』と思わせなくては、その価値も伝わらないことになります。本質ではないところのために、本質の部分が伝わらないことになってしまいます。

いかにたくさんの通訳実績表の中から、『この通訳者さんの通訳実績表、読んでみたいな』と思わせるか。あなたの通訳実績表は、そう思わせる要素を備えてますか?

 

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