【読者質問】社内通訳者ってどんな仕事?
ブログ担当の酒井です。
今日もいただいた質問にお答えします。
社内通訳のお仕事についてです。
いただいたご質問は以下。
現在勤務している会社で社内通訳者を目指しています。企業によって異なるとは思いますが、概ねどのような仕事内容なのでしょうか?
まあ・・・書いていらっしゃる通り企業による、どころか、配属されたチームによる、と言ってもいいでしょう。上司による、同僚による、プロジェクトによる、ということになってしまうんですが。
フリーランス通訳との違いで言えば、環境や状況によって、通訳だけではなく翻訳も求められる、というところは大きいかもしれません。通訳も翻訳もどちらも好きだ、という方ならまったく問題ない、うまく両方の経験が積める、ということになりますが、フリーランス通訳者の場合は「翻訳はやりたくない、翻訳はやらない」という方も多く、また案件照会時に断ることもできますが、社内通訳の場合はなかなかそうは言ってられません。
僕が通訳コーディネータをやっていた頃は、社内通訳者・常駐通訳者のポストのお問い合わせをいただいた時、「想定される通訳と翻訳の割合はどんな感じでしょう」という確認は最初の方にするべき事項でした。これによって手を挙げる候補者、声をかけるべき候補者がけっこう変わってくるからです。
もちろん、入る前は「んー、通訳メインの7、翻訳は3くらいかな」みたいな回答がありながら、入ってみると5対5くらいだったり、プロジェクトの状況によっては通訳が入らずに翻訳ばかりになったりすることもあります。ただ、いちおうは「通訳者・翻訳者」というポジションで入るので、例えば「この資料作っておいて」といった仕事は振られないのが前提です。
ただ、「これは私の仕事じゃない」という姿勢はやっぱり社内通訳だろうがなんだろうがいただけないとは思います。あまりに契約にない仕事が多いとマズいですが、たまに小さなことを頼まれたり、頼まれなくても手伝ってあげたりすると人間関係が良くなって結果的に仕事がやりやすくなる、というのはどんな職場でも共通ですね。社内通訳の場合はフリーランス通訳者と違って、明日も明後日も来週も、基本的には一緒に仕事をするわけですから。
また社内通訳の場合は「その企業」の通訳ですから、フリーランスほど分野が多岐にわたることは考えにくいです。金融系の会社なら金融のことがメイン、自動車関連の企業ならやっぱり自動車関連という感じでしょうか(とはいえ、経営会議などもあるので自動車や製造のことばかりというわけではありませんが)。そのため、「特定の分野の経験を積む、実績を積む」には社内通訳はうってつけでしょう。通訳学校では、ちょっとずつ違う業界・分野の企業に社内通訳として3年ずつ3社ほど経験してからフリーランスになるのが「黄金パターン」と言われたりもします。
あと、フリーランス通訳では考えられないようなタフな状況も発生したりします。〇時間ぶっ続けでひとりで通訳しなくてはならない、とか・・・ 社内に通訳コーディネータ役が常駐しているならアサインも気を遣ってくれるはずですが、無茶な業務があまりに続いたり「話と違う」なんて場合は早めの相談が吉ですね。たまになら頑張る!という姿勢も大切ですけど。カラダやココロに影響が出ちゃう前に。
僕がある生保会社に通訳コーディネータとして常駐していた頃は、3人(+週3日1人)の社内通訳者さんと、その方々とは別に3人の社内翻訳者さんがいました。日によって通訳が必要な会議数は違うので、パズルみたいにやりくりしていましたが、会議が重なる場合は契約している通訳エージェントに外注してフリーランス通訳者に来てもらったりしていました。会議と会議の間は最低1時間は休憩を取れるように調整していましたが、たまに「どうか!」とお願いしなくてはいけないことも。
僕がいたところでは上記の通り翻訳者さんは別にいらしたので、通訳がない時間帯は休憩、または予習に充てる時間という前提でしたが、通訳コーディネータがいなかったり、また会社やチームの方針次第では「空き時間は翻訳」なんてことにもなったりするようです。その辺はどの辺で線引きできるか、なんてことも考えなくてはなりませんね。
フリーランス通訳者を目指している場合でも、どこかの企業で社内通訳者として経験を積むのはとても重要だと思います。フリーランス通訳者は基本的に「即戦力」「払った対価分(かそれ以上)のパフォーマンス」を期待されますが、社内通訳者の場合はある程度の「育成・伸びしろ」が含められますから。
なんて思いつくままを書いてみましたが、参考になったでしょうか? また質問などが出たら、以下のフォームからお送りください。