【書籍】 千里の道も一歩から、と思える本
今回ご紹介する本は、『通訳席から世界が見える(新崎隆子・筑摩書房・2001年第1刷)
著者の新崎隆子(りゅうこ)先生についてはこちらのページをご紹介しておきます。
読むことをおススメしたい方:
・ 自分なんて通訳者になれるんだろうか、、、なんて思ってしまう方
・ 大先輩の軌跡を読んで勇気をもらいたい方
・ 『千里の道も一歩から』 という言葉が好きな方
実は、この記事を書いている2017年1月24日時点、
まだ30ページも読んでいないのですが、、、(^_^;)
これだけ読んだ時点で、『読んだらいい方、いっぱいいそうだな』 と感じたので取り上げました。
酒井は、通訳コーディネータであって、通訳者ではありません。
通訳者を志したことも、通訳者になるための勉強や努力をしたこともありません。
通訳者に発注する『依頼者』 の気持ちは
誰よりも分析して理解しているつもりですが、
実は 『通訳者』 の気持ちや心情、実情は、
理解している 『つもり』 かもしれないと思うことがあります。
だから、通訳者さんが出した本や書いた記事、ブログなども目を通すようにしています。
この本を知ったのは、現役通訳者の友人が講義の際に
配布していた資料に 『推薦図書』 のカタチで記載されていたのがきっかけです。
(その講義中に3冊、ポチッとamazon への発注が完了しました笑)
軽い気持ちで読み始めましたが、、、
最初の数ページですぐに引き込まれました。
なんだろう、とても読みやすい。
新崎さんの文章力もあるだろうし、
この本の体裁やちょうどよい厚さ(薄さ?)、
紙質や行間まで含めて心地よいと感じます。
章立てが『月』になぞらえてあり、
各月でエピソードが語られていきます。
例えば…
April: 通訳はどんな仕事か
May: 通訳学校で絞られる
June: 駆け出しの頃
といった感じに。
April では、一線で活躍する通訳者としての苦労話や、
新崎さんが考える 『通訳者とは』 について書かれています。
きっとここを読んで、『そうなんだよねぇ~』 と共感する方は多いはず。
それにしたって、2001年に書かれている内容が16年経った今でも
共感されるって、通訳業界ってなんだか不思議だな、とも思いました笑。
そして、May で書かれる 『通訳学校で絞られる』 。
ここを読み、『紹介したい』 と思いました。
このパートでは、通訳という可能性、選択肢に出会った新崎さんが、
通訳学校に入学して自分の無力さ、知識のなさを
痛感されている様子がありありと描かれています。
しかし一番気後れしたのは、時事問題に関する知識だった。子育てに追われる数年間の間に、わたしはすっかり世の中の動きに興味を失っていて、アメリカの政治や米ソの軍事対立の話題には全くついていけなかった。
立ち往生したり間違った訳をすると、すぐさま隣の生徒を当て、その人が正しく通訳するのを聞かされた上で、講師にたっぷりお説教をされるのはつらかった。
プライドは、あっという間にズタズタになった。
とりわけ悲劇的だったのは retention だ。(中略) 『集中力が足りませんね』 と注意されたが、(中略)どうやってこれ以上真剣になれるのだろうと悩んだ。
などなど、、、
時事問題に気後れしていた新崎さんが、
いまではNHKで教えているわけですね。
そうなるまでにはどれほどの努力を重ねてきたのだろうと、
想像するだけで身が引き締まる思いです。
(もちろん、その努力の一部も書かれています)
酒井もちょうど NHK の 『攻略!英語リスニング』 で
こつこつと英語の勉強をやり直し始めているところですが、
こうしたタイミングで、一流通訳者のスタート地点が見れたのは
本当に勇気に繋がりました。
もし、このブログを読んでいる方の中に、
『本当に通訳者になれるのかしら』 なんて思ってしまう方がいるようなら、
この本を読んでみると、勇気が湧いてくるんじゃないでしょうか。
『この頃の新崎さんに比べたらいまの私の方が…』 なんて笑。
きっと新崎さんも、そういう風に感じてほしくてこの章を書いてるんじゃないかな。
残りの10か月(10章)も楽しみです。