選ばれる通訳者になるには・・・『盛り付け』も大切
『一度、使ってもらえれば、きっとお役に立てる通訳者だとわかってもらえると思うんですが…』
多くの通訳者さんが思ったことがあるのではないでしょうか?
一度、依頼してもらえれば、、、
一度、試してもらえれば、、、
スキルには自信がある、、、
専門知識にも自信がある、、、
一生懸命やるのに、、、
でも、そのチャンスが与えられない、、、
この前提には、『良いものが選ばれる、売れる』 という思い、そして、通訳においても同様に 『うまい通訳者が選ばれる、専門知識がある通訳者が選ばれる』 という思いがあります。
そして、多くの通訳者さんは、『選ばれる通訳者になるには、もっとスキルを上げないと!! 専門知識を深めないと!! 』 と考えるようになり、また通訳学校に行ってみたり、ひたすら通訳スキルの練習に励んだりします。
ですが、、、それって、本当でしょうか?
本当に、選ばれる通訳者になるには通訳スキルを磨くこと、専門知識を深めることが条件なんでしょうか?
本当に、『良いものが売れる』 のでしょうか?
今日はそれを考えるヒントになるふたつの事例をご紹介します。
22年もの間、日の目を見ることのなかった革新的技術
チェスター・フロイド・カールソン(Chester Floyd Carlson、1906年2月8日 – 1968年9月19日)はアメリカ合衆国の物理学者、発明家、弁理士で、ワシントン州シアトルで生まれた。謄写版を使った湿式ではなく、乾式複写で使われる電子写真法を発明したことで知られる。カールソンの発明した製法は後にゼログラフィと命名され、「乾式複写」の代名詞となった。(Wikipediaより抜粋)
このカールソンが発明した電子写真法、この技術が、現代のコピー機の元になる技術です。つまり、カールソンの発明がなければ、もしかすると僕らはいまだに、すべての資料を手書きで書き写すか、ガリ版で彫ってペタペタ刷っていたかもしれません。それくらいの革新的な技術だったのですが、、、
カールソンがこの技術の特許を取ったのは1937年、しかし、その技術が商品化されたのは、それから22年後でした。その間、何をしていたか? カールソンも寝ていたわけではありません。IBMやコダックス等の企業にその技術を持ち込んで出資を依頼したのですが、、、断られ続け、ようやくその話に乗って商品化したのが、ハロイド社 — ゼロックス社でした。
22年間、商品化がされなかったのは、カールソンの技術に問題があったのでしょうか?
いえ、問題はそこではなく、カールソンの 『プレゼン、伝え方』 にあったのではないでしょうか。
ジョブズがいなくてもApple製品は生まれた、けれど…
Appleといえばジョブズ、ジョブズといえばApple、この公式は皆さん納得かと思いますが、、、
もちろん、ジョブズはそのアイデアと妥協のなさで、多くの ”夢の製品” を生み出してきた天才です。しかし、初期のAppleでは、製品開発を担当していたのはジョブズではありません。担当していたのは、共同創業者であるスティーブ・ウォズニアック。
ウォズニアックが開発し、作る。ではジョブズは何をしていたかというと、、、
もちろん、アイデアを出し、指示をしていたはずですが、ジョブズの主な仕事は 『資金調達(スポンサー探し)』 と、『売ること』 だったと言います。それは生粋のギーク(オタク)技術者だったウォズニアックにはできないことだったし、それこそがジョブズの得意とするところだったので、うまくいったのかと思います。
もし、ジョブズがおらず、ウォズニアックがひたすらに 『良い製品』 を黙々と作り続けていたとしたら、、、果たして今のApple は存在したでしょうか? 酒井には疑問です。
ジョブズの 『売る力』 がなければ、きっとすぐに潰れていたか、それこそIBMに吸収されていたのではないでしょうか。
『良いものだ』 『試してみたい』 と思わせるには 『盛り付け』 も大切
これが、今日酒井が皆さんにお伝えしたいことです。
どんなに中身が良くても、見た時に 『試してみたいな』 と思ってもらえないと、試してもらえません。
料理をイメージするとわかりやすいと思います。
どんなに新鮮なお刺身でも、適当に切られて適当なお皿に適当にベタッと置かれて出されるのと、きれいに薄造りにされて(薄いか厚いかは魚によるかな笑)、和柄の見事な大皿に、美しく切り口揃えて並べて出されるのと、そそられる食欲は変わってきますよね。同じものだとしても、スーパーのトレイに乗せたまま出されるのと、お皿に移してちょっと見栄えよくパプリカか何かを散らして出されるのと、違いますよね。
ましてや、知らない相手に対してトレイに乗った商品を出して 『大丈夫!! 味はいいから試してみて!!』 なーんて言ったって、説得力もなければ、相手には試す義務も必要もないわけです。きれいに盛り付けられた方を選ぶに決まっています。
これを通訳者に当てはめてみると、通訳スキルを磨き続けて、専門知識を身につけて、でもそれが伝わらない 『他の通訳者と同じ、変わり映えのしない』 履歴書や実績表を見込み客に送りつけて、『なんでわかってくれないの!?』 と嘆いているようなイメージでしょうか。そりゃそうですよ、だって試したいと思えないんだもの。
選ばれる通訳者になるには、やっぱり 『選ばれる通訳者に見える』 ための工夫が不可欠です。
あなたの『盛り付け』、見直してみては?