納品した翻訳への確認が延々と続く・・・

ブログ担当の酒井です。

納品した翻訳に対してクライアントから確認や質問が延々と続く・・・これって、いつになったら「翻訳完了」になるの?

 

良くも悪くも、翻訳は仕事の結果が成果物として残ります。

通訳は現場が終わればお仕事終了、そしてその時点でクライアントからの評価が決まっている、というのが一般的ですが、翻訳の場合は納品した時点「から」クライアントによる評価が始まります。では、その評価はいつまで続くんでしょう? 翻訳者は納品後も質問や修正に答える義務があるんでしょうか?

極端な例ですが、僕が翻訳コーディネータをしていた時代に、翻訳を納品してから1年近く経って、クライアントから「あの時の翻訳なんだけど・・・」と連絡をいただいたこともあります。では、これに対して追加費用なしで対応するべきなんでしょうか?

 

と書いては見たものの、「これ!」といった正解はありません。クライアントからの指摘や確認がスペルミスのような「明らかなミス」であれば、「時間が経っているので対応しません」とバッサリ切ることもしにくいケースもあります。取引が長いクライアント、大切にしたいクライアントの場合は特にそうですね。

ですから、ここで考えて欲しいのは「対応する」or「対応しない」ではなく、「基準を作っておく」ということです。基準さえ作っておけば、そちらに照らし合わせて判断することができるからです。

 

「検収」という言葉があります。

検収 – 発注に応じて納められた品などを、注文の際の品質条件・数量・仕様に合っていると確かめた上で、受け取ること。

 

要は、クライアントに「この翻訳でOKです。成果物として受け取ります」と言ってもらうことですが、この検収が完了した時点で翻訳物の責任や所有権があなた(翻訳者)からクライアントに移る、と言えばイメージしやすいでしょうか。(実際は所有権とか知的財産権とかは一貫して翻訳者に発生することなく、すべてクライアントに帰属するのが一般的な契約だと思いますが。例として、です)

ということで、あなたの翻訳にもこの「検収期間」を設定しておくべきでしょう。

クライアントとの契約時、案件受注時の契約書なりに検収期間の項目を定めておき、「検収期間は納品日から3ヵ月とする」など記載しておけば、理屈としては納品から3ヵ月が過ぎればその後になにかミス等が発覚したとしても、「追加の問い合わせ」として扱える、ということになります。

 

例えば、JTF(日本翻訳連盟)のホームページに掲載されている「翻訳基本契約のひな型」にはこのような項目があります。

<業務の完了>
第5条 翻訳業務は、乙が十分なチェックを実施した成果物を、甲が受領し検査した時点で完了したものとみなす。甲は受領後、遅滞なく検査して業務を完了させなければならない。

https://www.jtf.jp/jp/useful/report_bk/contract.html

ここでは特に「〇日」等の記載はなく、「遅滞なく検査して」という表現になっていますが、この部分を具体的な期間にしてもOK、ということです。

 

ということで、もしそもそも翻訳受注時に契約書がなければこのJTFの翻訳基本契約のひな型をベースにして契約書を作っておくのも良いと思いますし、翻訳エージェントやクライアント側で契約書を用意しているなら、そこに完了の条件や検収期間の定めがあるかを確認し、記載がないようなら問い合わせてみる、というのも良いでしょう。

ただし、上にも書いた通りこれはあくまで「理屈の上では」の話です。実際のビジネスにおいては、すべてを契約書通りにしゃくし定規に対応していればいいというものでもありません。中には「契約書にはこうあるけれど・・・」という対応を求められる、そうせざるを得ない場合もあります。

なので、契約書などはあくまで「基本方針」「基準」に過ぎない、と踏まえたうえで活用してくださいね。

 

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