元通訳コーディネータが思う『通訳現場心得』

ブログ担当の酒井です。

今日は特に翻訳者より通訳者に重要だと思われる「現場力」について。『通訳現場心得』なんて表現してみましたが・・・

 

翻訳の場合は基本的に在宅やオフィスで翻訳作業をしますから、「現場」と言ってもあまりピンとこないかもしれませんが、通訳の場合はどこか「現場」に行って通訳をすることが多くなります。(最近はリモートで行う通訳も増えてきていますが)

そうした時に必要とされるのが「現場力」と言われるものですが・・・そもそも「現場力」って何のことなんでしょうね?「通訳現場で必要とされる力」と言い換えても具体性がないし・・・

ということで、例えばどういうものがあるのか、ちょっと書き出してみました。とはいえ、今日の記事は通訳現場に出た経験がまだ少ない方向けのトピックなので、「当たり前じゃん」と思われることもあるかもしれません。

 

・通訳現場に余裕を持って到着する力

いきなり当たり前のことを、と思うかもしれませんが、実際に遅刻する通訳者もいるんだから仕方がない・・・

といっても、単に寝坊をしないとか電車を間違えないとかいう話でもなくて、ここでは「遅刻のリスクを回避する力」と考えていただければいいかなと思います。

例えば電車の遅延なども想定して時間に余裕を持って向かうというのもそうだし、待ち合わせの場所をハッキリ確認しておくのもそう。

ただ、そこまでやっても意外と多いのは「待ち合わせ場所に着いたけど担当者と会えない(うまく落ち合えない)」というケース。そうした際に速やかに連絡するべき電話番号(担当者携帯など)もしっかりと控えておきましょう。

 

・通訳現場にあわせた服をコーディネートする力

すみませんね、当たり前のことばかりで・・・でも、お堅めの企業のグローバル会議にパステルグリーンのひらひらスカートで通訳現場に現れた通訳者さんもいるのでね・・・

ほとんどのケースではジャケットを着用(またはそれに準じた服装を)しておけば無難かと思います。そうでないケースとしては次のような通訳現場が考えられます。

・工場内、建築現場など「安全性・動きやすさ」が重視される通訳現場

ヘルメットの着用を求められたりもするのでヘアスタイルにも柔軟性?を。指定の制服があれば問題はないですが、中には「女性が着替えるための場所がない」
盲点が当日発覚したこともあったなぁ・・・

・ラグジュアリーブランドのプレス向け通訳現場

華やかな服装のクライアントが立つ中で通訳者だけが紺やグレーだと逆に浮いてしまいますね。できればそのブランドの製品を身につけて。ライバルブランドのバッグや服を身につけて行ってしまって、以降そのブランドからのお仕事はなくなった、なんて話も・・・(それだけが理由かはわかりませんが)。

 

・クライアントと良い空気を作る力

この辺になるとちょっと具体的に書くのも難しいのですが、通訳者はクライアントを目の前にして仕事をすることが多いわけなので、現場に着いたら挨拶は当然ですが、その後は黙々と準備をするだけじゃなくて、少しクライアントや現場の方と会話をしておくことをお勧めします。

もちろんクライアントや現場の空気・雰囲気次第ですが、多少の世間話などできるようならしておくのも良いと思います。特にどうしても話すことがない、でもずっと沈黙もちょっと気まずいな、という場合は、あえてだいたい分かっている確認事項を直接確認するというのも良いと思います。あとは当然ですがクライアントに関する情報をネットで仕入れているでしょうから、その辺がトピックになったりするかもしれません。

これは決してクライアントのご機嫌を取ろうというわけでもなく、ある程度の空気を作っておくと、実際に通訳もしやすくなります。結局は自分のためになりますから。クライアントだけではなく、パートナーの通訳者がいる場合も同様です。

「なんだかあの通訳者さん雰囲気良かったな」という印象だけでもお仕事が増えるきっかけになったりします。

 

・トラブル対応力

この辺はもう、、、どうしても経験なども必要になりますので具体的には書ききれませんが、通訳現場ではトラブルは起きるものだと思ってもいいでしょう(脅すつもりじゃないですが・・・)。

上に書いた担当者とうまく落ち合えないこともそうだし、パナガイドが届いてない、壊れている、通訳パートナーが風邪をひいて声が出ない、スピーカーの順番が変わった、急なアドリブが入った、逐次通訳と聞いてきたのに現場でウィスパリング通訳を求められた、話が違う、、、などなど。

そうした時に焦ったりするのは当然だし仕方がありませんが、こうした場面をどうにか乗り切ってくれる通訳者さんは通訳コーディネータからするとものすごく頼りになります。

それだけじゃなく、(たとえトラブルが通訳コーディネータの責任じゃなくても)「申し訳ない・・・!」と通訳コーディネータ側には「この通訳者さんに借りができたなぁ」という思いも出るので、自然と依頼も増えていきます。

要は、ピンチはチャンスってことです。「ここを乗り切れば仕事が増える・・・」と思えるようになると、トラブルも歓迎・・・は言い過ぎですが、悪いことだけでもない、と思えるようになる・・・でしょうか?

 

 

以上、通訳者の「現場力」と聞いてイメージしたものを書いてみました。

ただしこれらはあくまで「(元)通訳コーディネータの視点」からみたもの、つまり「通訳コーディネータが通訳者に(勝手に?)期待していること」なので、実際に現場に出て通訳をしている通訳者さんが考える「現場力」とはまたちょっと違うかもしれませんね。というか、そもそも僕個人の見解ですからその点はご了承のほどを。

当たり前すぎたり、また通訳とは直接関係がないので通訳学校では教わらないことばかりだったんじゃないでしょうか。ぜひ参考にしてみてください。

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