『どこに出ても大丈夫な通訳者』なんて目指さなくていい理由

ブログ担当の酒井です。

たまに、「どこに出ても、どんな場面でも、どんな案件でも大丈夫な通訳者になりたい」という方がいます。うん、気持ちはわかります。弱点は克服したいと思うのが人情ですよね。

その上で・・・

そんな通訳者は目指さなくていいですよ。

 

実際、僕の11年の通訳コーディネータ経験から言えるのは、「そんな通訳者はいない」ということ。

どんなベテラン通訳者も、というか、ベテラン通訳者であればあるほどかもしれませんが、常に、良い意味で「自分はどこに出ても大丈夫”じゃない”」と思っているようでした。

例え過去に対応した案件の続きであっても資料は改めて請求されますし、前回行われたような確認事項も案件前に改めて確認されていました。「前回と同じだからまあいいだろう、大丈夫だろう」ということは無いように見受けられました。それは、「自分だったら大丈夫だ、とは思っていない」という証拠ではないでしょう。

こういうことを踏まえていくと、「どこに出ても大丈夫な通訳者」を目指すのではなく、「常に全力・最善を尽くす通訳者」を目指すことが、結果的に自信に繋がり、信頼される通訳者になる近道じゃないかなと思います。

 

もうひとつ、「誰にとっても最高の通訳者」も存在しないということも覚えておくとよいと思います。

事実、通訳コーディネータ時代にあった事例ですが・・・

新規の企業からの初受注を獲得した際のことです。その企業ではそれまでも他のエージェント経由で通訳者を手配していたが、どうも品質に満足がいかず、私が勤めていた通訳エージェントに問い合わせてみた、という経緯がありました。なので、やはり通訳者の手配には気を遣いました。

そしてお願いしたのは、何度も依頼をしたこともあり、数年来のお付き合いのある2人の通訳者、しかもその2人は互いに友人で、何度もペアを組んでいます。チームとしても申し分のないパフォーマンスを発揮してくれるはず、個人的には「この2人に依頼できたんなら安心だ」と思えるような2人でした。

が、結果、、、
そのクライアントからは、「もう今後の依頼はないと思います」と、言われてしまいました・・・

 

クレームというほどの事態には発生せず、担当者も怒って上記のセリフを言っているわけではなく淡々と言われてしまったのですが、僕としては「なぜだ・・・」という気持ちでした。その理由についてもヒアリングを試みたのですが、どうも回答はハッキリしない、、、その2人にも「当日、何か問題ありました?」と訊いても、目立ったミスやトラブルは思い当たらない・・・

原因がわからなければ改善のしようもありません。ただ結果だけ言えば、会社としてのビジネス上の判断で、その案件の請求は半額に減額しました(当然、原因がはっきりしない以上、通訳者さんには100%お支払いしました)。

この案件が片付いた時、自問しました。

「もう一回手配しなおすとしたら、どうするかな?」

と考えてみたのですが・・・

「やっぱり、あの2人が空いていたらあの2人に依頼するな」なんて結論に達してしまいました。 それほどに信頼しているペアだったのです。最終的には、「まあ、相性ってあるよね」ですませました。

この件だけではなく、信頼している、何度も依頼して高評価をいただいている通訳者さんでも、ある企業に出した際にNGになることはありました。こんなことがあるので、結局「どこに出ても大丈夫な通訳者」や「誰にとってもベストな通訳者」なんていない、と言えます。

「相手が満足してくれるか、自分を気に入ってくれるかどうか」は、あなたにコントロールできることではありません。わかる人の言葉で言えば「影響の輪」ではなく「関心の輪」に入っている事柄です。

だから、あなたにできることは、「最善を尽くす」ことだけ。そんな風に取り組んでいれば、結果的に「信頼される通訳者」になれるんじゃないでしょうか。

『誰にでも選ばれる通訳者』ではなく、『誰かには必ず選ばれる通訳者』を目指すことをおススメします。

 

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