通訳エージェントは切ってもいい

ブログ担当の酒井です。

『通訳エージェントは切ってもいい』と言われたら・・・どう思いますか?

 

ちょっと物議を醸しそうなタイトルですね、わざとですが(^_^)

フリーランスの通訳者さんは通訳エージェント、社内通訳者さんは派遣会社、という呼び方でエージェントを使っている方が多いと思います。

大手では日本コンベンションサービス、サイマルインターナショナル、他にもコングレ、ISS、テンナイン、ケイワイトレード、インターグループ、、、他にもたくさんありますよね。

当然ながら、それらエージェントを利用すると、エンドクライアントが払うお金からエージェントが自分たちの利益分を取り、皆さんの元に入金されることになります。エージェントや案件、力関係にもよると思いますが、だいたい売値(通訳エージェントがエンドクライアントにオファーする金額)の3割~4割程度が通訳エージェントの取り分、というのが一般的ではないでしょうか。

(ちなみにこんな情報は調べればエージェントの売値も出ますし、通訳関係者であればだいたい肌感覚でわかっているので、「えっ!?こんなの公開していいの!?」という程の情報でもなかったりします、念のため、、、)

 

通訳者さんの中には、「ただ間に入るだけなのに取りすぎ!」なんておっしゃる方もいらっしゃいます。言わないまでも、思ってらっしゃる方もいるかもしれませんね。

もしそう思うのであれば、「通訳エージェントを使わなければいいだけ」だとも思います。間に入ってもらわずに、自分で営業し、案件情報を集め、資料を請求し、請求書を立て、支払いリスクを管理し、、、ということも可能と言えば可能かもしれません。その労力が通訳料の3割~4割に見合うかはわかりませんが、、、

もしそれはやりたくない、ということであれば、やっぱり価値はあるということでしょうから、ビジネスパートナーとして気持ちよくお支払い(実際には最初に引かれているわけですが)するのが互いに良いのではないかなと思います。

 

一方で、クライアントさんのお話を聞いていると、確かに「その価値がない」通訳エージェントもいるのかなと思います。正確に言えば、その通訳エージェントには価値がない、ということではなく、「その通訳者さんにとっては価値がない」という意味です。

特に英語以外の言語だと耳にするように思いますが、「通訳者にとって価値がない」通訳エージェントとは、「仕事を持ってこない通訳エージェント」です。

通訳者のAさん、ある通訳エージェントに登録してみたものの、数ヶ月経っても仕事の照会が来ない。アプローチをしても状況は変わらない。そしてごく稀に、「案件が入りました」と連絡が来る。半年で2、3件。はたしてこのエージェントは、Aさんにとって価値のあるエージェントでしょうか?

照会がない理由もいろいろ考えられるので一概には言えませんが、少なくともAさんはそのエージェントに対して義理を立てる必要はないと思います(アプローチをすべてやめてしまうとか、ないがしろにする、という意味ではありません)。

 

いくつかの選択肢があると思います。酒井が考えるのは以下。

1.欲しい仕事を多く持つ通訳エージェントに登録する

2.自分で仕事を直で取りに行き、自分で請ける

3.自分で仕事を直で取りに行き、エージェントに紹介する

 

まず1、他の通訳エージェントに登録する。これがいちばん自然で、頭に浮かぶ方法かと思います。というか、当然ですね。専属でない限りは複数のエージェントに登録しているのが普通だと思います。

Aさんは中国語のお仕事が欲しいと思っていますが、登録したエージェントには中国語の案件はない可能性もあります。コーディネータが率直にそう言ってくれるケースもありますね。となると、中国語の仕事を多く抱えるエージェントをリサーチし、そちらに登録するべきです。肉屋で魚を探し求めるのは効率が悪すぎます。

そして2、自分で仕事を取りに行って自分で請ける、つまり通訳エージェントを飛ばしてエンドクライアントから直請けという選択肢。あまり考えなかったかもしれません。というか、まずこんなことが思い浮かぶのではないでしょうか。

「そんなこと(直請け)をしたら業界の慣例に反するし、通訳エージェントから睨まれてしまう」

その気持ちはわかります。そして、通訳エージェントから睨まれるというのもある種、事実です。現に私も通訳コーディネータ時代、クライアントから直で仕事を請けている通訳者さんは警戒(敬遠)せざるを得ませんでした。だって「もしかしたらウチの仕事を取っていくんじゃないか」心配ですから。

その上で、「通訳エージェントに睨まれますね。・・・だから?」というところまで考えてみて欲しいなと思います。

普段からお世話になっている、仕事を照会してくれているエージェントから睨まれるとすれば、それらの関係や仕事がなくなってしまうことはリスクでしょう。でも、半年に2、3件の照会しかしてこない通訳エージェントに睨まれたとしたら、なにがリスクなんでしょうか?

「通訳エージェントから仕事が貰えなくなってしまう」ですって?いえいえ、元から仕事なんて貰ってないでしょうが笑。なんて思うわけです。だって仕事を持ってこない通訳エージェントには価値がないんですから。

 

ただ、その心配を解消し、さらに通訳エージェントとも関係が築ける最高のカタチが、3.自分で仕事を直で取りに行き、エージェントに紹介する、です。

自分で仕事を取りに行くところまでは、2.の直請けと同じです。ただ、ここではエンドクライアントから依頼が貰えそうになったら、その案件をエージェント経由で依頼してもらうようにします。

もちろん、その分エージェントの取り分が必要になりますから、その分はエンドクライアントに負担していただくようにするか、もしかしたら先々を見越してAさんが身を削る(エージェントに自分の通訳料を下げて提示する)ということも可能でしょう。いずれにせよ重要なのは、「Aさんが主導権を持っている」ということです。必要なら、配分について通訳エージェントと交渉もすればいいでしょう。

この形を取ると、自分の取り分(お金)が減るので一見、損をするように思えるかもしれませんが、私から見ればメリットがたくさんあります。

まず、紹介した通訳エージェントと良い関係が築ける。ビジネスにおいては仕事を紹介してもらうのが何よりの関係作りになることは、身をもってご存知ですよね?仕事を紹介することによって、Aさんは通訳エージェントにとって『特別な存在』になります。そんなことができる、そんなんことをする通訳者さんはほぼいませんから。

そして、通訳エージェントにとって『特別な存在』になると何が起きるか。そのエージェントが持っているAさんにお願いできそうな仕事が、まずAさんの元に集まってきます。もちろん、スキルや分野などに問題がないという前提ですけれど。そうなると、最初のクライアント紹介で削った自分の取り分なんてすぐに取り戻せそうじゃありませんか?

さらに、エンドクライアントにもメリットが出ます。「まずはAさんを優先してほしいけど、AさんがNGな場合のバックアップが可能になる」という点。企業にとって「通訳者がいないから会議ができません」なんてことは避けたい事態です。通訳エージェントを通すことでそのリスクが回避できます。

もちろん、Aさんは支払管理リスクや資料請求(これはCCを付けてもらうこともできるかもしれません。お望みなら)、請求処理などをエージェントに任せることができるので、本来の業務、通訳業務に集中できます。

 

どうでしょうか?もちろん、自分で仕事を取りに行くための行動や努力、投資は必要になりますが、それに見合う成果は手に入ると思います。

さあ、「仕事がないんです」とか「エージェントが仕事をくれないんです」なんて言ってないで、仕事を取ってこないエージェントに期待することなんてやめて、さっさと自分で仕事を取りに行きましょう!

これから生き残っていく通訳者には、こうした視点もとても重要になると思いますよ。

 

追伸:今回の選択肢には入れませんでしたが、自分自身がエージェントになる、という可能性もありますね。

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