[これって確定?]クライアントから発注確定の文書がもらえない場合
ブログ担当の酒井です。
契約書セミナーに参加してきました。弁護士さんが契約書の基本、NDA、業務委託契約書、などについて説明&具体的に質問ができる3時間のセミナーでしたが、自分のことはもちろん、通訳者、翻訳者にとって気になるようなことも一緒に質問してきましたよ。そのひとつが・・・
「クライアントが発注確定を書面でくれないケース」です。
…気になりません?
発注確定の書面というのが具体的に何を指すかは様々なケースがあると思います。例えば、僕が勤めていた通訳エージェントであれば、クライアント企業に対しては、メールで送付する見積書PDFに「署名欄」が用意してあり、「発注確定の際はここに署名してファックスかPDFで返送してね」というようにお願いしていました。
一方、通訳者さんや翻訳者さんに対しては、こちら側から既定の書式の「通訳依頼票」をPDFで送付していました。その通訳依頼票には当日の待ち合わせ情報や業務時間等も盛り込まれています。
「あるある」だと思いますが、中には「見積書にサインして送り返してくださいよー」とお願いしてもなかなかその通りにしてくれないクライアントもいました。そんな時はどうしていたか・・・ 結局、「相手次第」でした。
広告系の企業担当者に多いですが(偏見?笑)、なかなか見積書に署名して返送なんてやってくれませんでした。確かに、いつも動き回っていますから、デスクに座って見積もりを印刷して署名してスキャンしてPDF、またはファクスで返送なんて、そんなメンドクサイことやりたくないはずです。正直なところ、僕だってそんなことやれと言われたら面倒でイライラします。「いいじゃねーか!発注するって言ってるんだから!」ってな気持ちです。
そこで「ルールだから」と、しつこく何度も返送をお願いしていたら、最終的には機嫌を損ねてしまうリスクもあります。いわば「あなたを信頼していません」と言っているようなものですから。
なので、個人的には「じゃあこのメールで発注確定として扱いますねー」という形で済ませることもたくさんありました。上司からは嫌がられていたと思いますけど・・・(^^;)
もちろん、金額が大きい、依頼主が聞いたこともないような会社または個人だ、取引が初めてないし数回しかない、いつもと条件が違う、などであれば、前払い(特に依頼主が個人の場合)を含めてしっかりとリクエストして、受け取るまでは「確定してないですからね、通訳者いなくなるかもしれませんよ」みたいなやり取りをしたこともあります。
で、それはさておき、最初の疑問。上に書いたようなケース・・・ つまり、見積書を送った、でも相手が署名をして返してくれない、こちらから「じゃああの見積りで確定として進めますね」とメールした・・・ は、法的にみて「発注」は為されているのかどうか?
その契約書セミナーの弁護士さんの解釈では・・・
「発注確定として理解してOK」だそうです。
こうしたことを知っていれば、ある程度関係性がある(取引が何度もある、など)クライアントが相手であれば、見積もりや書面での発注確定に拘り過ぎずに、メールで確定としてしまうなど、多少の融通を利かせてあげるのもビジネス全体を通して円滑に取引をするひとつのポイントになるかもしれませんね。
ルールはもちろん重要ですが、本質は「信頼関係の維持」のはず。信頼関係がしっかりと構築されていれば、契約で揉めることを心配したり、ガチガチの契約書で武装する必要もなくなるはずですから。
優先順位を間違えないようにしてくださいね。
追伸: もちろん裁判ではいろんな背景なども重要になってきますから、見積もりを送ったその1時間後に「返送してくれてないけどあの見積りで確定として進めますね」と送りつけて「やったー法的にも発注確定だー」なんてことは通用しませんよ笑