昔は『良い通訳』をすれば依頼が来た。いまは…
稼げる通訳者育成のカセツウです。
『品質の良いものを提供すれば売れる』 の誤解について。
通訳は専門職。それも高度な専門職です。
通訳スキルという専門のスキルが求められます。
その影響もあるのか、通訳者さんは”職人タイプ”の方が多いようです。
つまり、『スキルの向上』 に取り組み、『極み』 を目指すタイプ。
その中で、酒井が感じるのは
『良いものが売れる=高いスキルがあれば依頼が来る』 という思い。
でもそれって、、、思い込みです。
正確に言えば、『そう期待したい』 んじゃないかな、と感じています。
でも、その考えは、決して間違いだったわけではないと思います。
昔、、、つまり、選択肢がない時代は、そういう時代でした。
戦後、物資がない時代、、、
テレビを作れば売れました。
冷蔵庫、洗濯機、、、
『モノがない』 中で 『機能』 があれば売れました。
そのうち、ちょっと選択肢が増えてきました。
どの家庭にも『電化製品・三種の神器』 が行きわたると、
最低限の機能が付いた製品だけじゃなく、
『性能の良い』 製品が出回り、そうすると 『普通の製品』 ではなく
『品質の良い製品』 が売れる時代になってきます。
次に、どうなったか。
『品質の良い製品があふれる時代』 になりました。
すると、、、?
そう、選択肢が増えました。
製品Aも、製品Bも、製品Cも、製品Dも、『品質の良い製品』 です。
つまり、この時点で 『品質が良い』 は 『最低限の条件』 に成り下がってしまい、
『品質が良い”だけ”』 では選ばれなくなってしまいました。
現代は、選択肢があふれ返っています。
だから、『キレイに映るテレビ』 が選ばれることもあれば、
『外出先でも手軽に見られるテレビ機能が着いたスマホ』 が選ばれることもあります。
なんなら、4Kテレビとスマホを比べることもないでしょう。
だから、『品質の良いものを作れば売れる』 時代は終わりました。
消費者の 『目的=使う場面や状況』 に『適した』 製品が選ばれるようになっています。
そういう製品が 『売れる』 製品です。
そして、、、
これまで、『家電』 について書いてきました。
でも、これ、『通訳者』 も同じです…
数十年前は、『通訳者』 なんて日本に何人もいませんでした。
ましてや、『言葉ができるスタッフ』 ではなく 、通訳をすることを
専門とするような人間は、ほとんど存在しませんでした。
『通訳ができ』 れば、それだけで選ばれました。
他に選択肢がないから。
その頃は 『通訳』 という機能すら不要だったかもしれません。
『外国語が話せる』 という機能だけで十分だったかもしれません。
だから、それで売れました。
そのうち、『性能が高い通訳者』 が出始めました。
彼/彼女たちが選ばれるようになりました。
9割の人が6から7の能力の中で、9から10の能力を発揮している、、、
そういう 『スキルの高い通訳者』 が選ばれる時代です。
だから、『通訳スキルを磨けば仕事が来る』 時代でした。
そして、いま、、、
『通訳ができる』 『高い通訳スキルを持つ』 通訳者が、
自らのことを 『コモディティ化している』 と嘆く声を耳にします。
『部品のように使い捨てだ』 と、、、
もう、言う必要はないと思いますが、、、
『家電』 と同じです。
もちろん、通訳スキルを磨くこと、高い通訳スキルを手に入れること、
それを否定したり無意味だというつもりは一切ありません。
それは 『非常に重要』 なことです。ただ、、、
『品質の良い製品』 があふれ返った家電業界がどうなったか、
そして、どんな製品が求められるようになったか、、、
そういう視点で通訳業界を見てみることも必要な時代なのかもしれません。