通訳と翻訳の両立は可能か?

ブログ担当の酒井です。

通訳と翻訳を両立することは可能なんでしょうか?

 

この質問は、インハウス(社内付き)の通翻訳者さんよりも、フリーランスの通翻訳者さんから良くいただく質問です。

インハウスの通翻訳者さんの方は、両立できるか?というよりも、会社や上司から頼まれる(割り当てられる)と「イヤです」とは言えませんし、両方をこなすことを求められるケースが多いので、選択の余地がない悩む余地がない、というところじゃないかと思います。(もちろん通翻訳の割合などは会社や部署によって様々です)

ところが、フリーランスになると、上司もいませんし、どこかから自然と仕事が降ってくるわけでもありません。自分で仕事を獲得に行く、という立場になるだけに「選ぶ余地」が出てくる故の悩み・迷いじゃないでしょうか。

 

で、実際のところ通訳と翻訳の両立は可能なのでしょうか?

とはいえ、僕が可能だとか不可能だとか決める立場でもありません。そんなの本人が決めればいい話だからです。可能と思えば可能でしょうし、不可能と思えば不可能でしょう。

・・・なんて「建前的な」話は横に置いておいて、ここでは「通訳翻訳コーディネータ」の視点から見て、両立している(またはしようとしている)通翻訳者を「どう感じるか」について述べてみます。

 

あなたが通翻訳エージェントに登録して、「通訳も翻訳もできます!」とアピールしたとします。ではそれは、通翻訳エージェントに対して効果的な強みになるのかどうか? それも通翻訳エージェントの体制によるかなと思います。

例えば 通訳も翻訳も同一の人や部署がコーディネートしているような、いわば「ひとり社長&従業員」みたいな小さな通翻訳エージェントの場合は、そのアピールはもしかすると魅力的に映るかもしれません。通訳だろうが翻訳だろうがあなたに相談してみよう、と思える(=覚えていられる)からです。

 

一方で、僕が在籍していたような、通訳は通訳部、翻訳は翻訳部、という風に部署や担当者が分担して手配をしている通翻訳エージェントの場合、「通訳も翻訳もできます」は案外「魅力的に感じない」のが実情じゃないかなと思います。通訳部のスタッフは通訳者にしか興味はないし、翻訳部のスタッフは翻訳者にしか興味がないものだからです。事実、僕は翻訳部でも通訳部でもリーダーを務めましたが、翻訳部時代は通訳者のことなんてまったく知らなかったですし、通訳部に移ってからは翻訳者の状況確認などほとんどしなくなりました。そういうものです。

 

もちろん、通翻訳エージェントによっては部署間の情報共有や通翻訳者データベースの共有がバッチリ!というところもあるかもしれませんので、その場合はまた印象も変わってくるかもしれませんが。

そういう意味では、少しおかしな話かもしれませんが、同一エージェントに対して通訳部には「通訳者です」とアプライし、翻訳部には「翻訳者です」と、2回アプライするくらい切り分けた方が、むしろ効果的かもしれない・・・なんて風にも思います。(現実的にはそこまで両部署が隔絶されていることもないとは思いますが)

 

 

というのが通翻訳エージェント側の視点、ですが、実際のところ、この質問をしてくる方の可能かどうかというのは「キャパシティ的にどうなのか?」ということも気にしてるんだと思います。まあそれこそ「あなたのキャパシティ知らないけどそれ次第では?」なんですが笑、僕の印象として、「スケジュール調整・時間の投資先の割り当て」が大きな課題になると思っています。

翻訳のペースを1日4000字とした場合、通訳を引き受けると、通訳の当日はもちろん、業務のための資料の読み込みや準備にも当然時間を割く必要があります。ということは一般的に考えて、通訳1件を引き受けることによって、翻訳の生産量は激減することになります。果たしてそれで納期の厳守や報酬的に問題は起きないのか?

逆もまた同じ。通訳をやっている中で翻訳を引き受けると、翻訳は納期が明確に決められているので、よほどスケジュールに余裕がない限りは翻訳の納品完了するまで通訳に集中するというのもなかなか難しい面があると思います。

そしてもし、翻訳のために通訳案件の照会を断ることが重なったら、または通訳のために翻訳案件の照会を断ることが重なったら、コーディネータ的には「この通訳者さん(翻訳者さん)、あまり仕事引き受けてくれないなー」という印象に繋がって、その内に照会の件数自体が少なくなっていく・・・なんて可能性まで出てきます。(そりゃ何回も断ってたら照会するだけ無駄、という気持ちになります)

 

こう考えてみると、そもそも「どうして通訳と翻訳の両立が必要なのか?両立したいのか?その理由は?」なんてところから考えてみる必要がありそうです。

「通訳だけだと食っていけない」とか「翻訳だけだと仕事が少ない」というのが理由やきっかけだとしたら・・・ もしかすると、通訳と翻訳の両立を考えるよりも先に、いかにそれぞれの仕事・収入を増やすかを考えて努力する方が早い&成果につながるかもしれませんね。

 

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